鉄割アルバトロスケット稽古場レポート


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戌井昭人 vs Dr.エクアドル●

●出演者一言インタビュー●

●レポーター Dr.エクアドルの感想●


トリを飾る『鉄割アルバトロスケット』の稽古場は敬老会館。昼間はご老人が囲碁や俳句などを楽しんでいる場所です。そんな畳敷きの広間で、座布団をひいて長机を囲み、みなさんくつろいだご様子の鉄割メンバー。小さなステージでは淡々と稽古が進んでいます。

今回のレポーターは第9回演フェスに参加したゴキブリコンビナートのDr.エクアドルさん。ご本人も本番前の多忙な時期に快く引き受けてくれました。(事務局)

稽古場1隣室からそっと稽古を覗き見るDr.エクアドル
稽古場は某区の敬老会館。当然大声は出せないので、静かな稽古となる。ステージがいい味稽古場2
稽古場3究極のリラックスムード。レポートだからってヤラセじゃないんです。これが素の雰囲気
他人のシーンは基本的に興味なし。自分のシーンだけに必死に取り組むのがモットー稽古場4


戌井昭人vsDr.エクアドル

対談1 Dr.エクアドル(以下Dr):役者さんは何人くらいなんですか。
戌井:15〜6人くらいですね。最初はもっといるんですけど、だんだんいなくなっちゃうんですよ。しっかり芝居をやっている人とかが本番を見て「出たい」といって来るんですけど、ずっとあんな感じだからいなくなることが多いですね。
Dr:稽古はあんな感じで?
戌井:本番まではもうずっと。ゲネもあんな感じで。本番になるともう800倍くらい凄くなっちゃうんですけど。予想もしなかった事って本番ではあるじゃないですか。
Dr:ありますね。
戌井:それがやりたかったりってあるじゃないですか。みんなであいつのこと胴上げして離しちゃったりとか。
Dr:予想もできないですね。
戌井:でもそれが3回公演、4回公演ってなると固まってきて面白くなくなってきちゃったりして、新たな手、新たな手を。

Dr:稽古場はいつもこの近辺で?
戌井:そうですね。演劇で借りると競争率が高くて借りれなかったりするじゃないですか。前もグアッーと大声出したりしてたら苦情が来て借りられなくなったりとかして。だからだんだん大声を出さない稽古になっていったんです。
Dr:そういうことなんですか?本番へのタメというわけではなくて?
戌井:いや、うまい具合に本番へのタメにもなって・・・。
Dr:一挙両得ですね。
戌井:みんな色々なバイトをしてるし、耐久性がないから朝から夜までとか稽古できないんですよ。稽古場は本当は18時からなんですよ。みんな集まり出すのが19時半くらいで、前に「なんで誰も来ないんだろう」とか待ってて、1時間待っても2時間待っても誰も来なかったっていう。一番ショックだったのが最後まで待ってても渡部以外誰も来なくて、渡部と二人で寝て帰ったってことありましたよ。でもバリ島の人ってそうみたいなんですよ。14時に集合っていっててもようやく集まり出すのが17時でそれから1時間練習して終わりっていう話を聞きまして、この人たちとやるときはバリ島の人だと思うことにしたんです。そうすると気持ちも楽になってバリ島気分で作っていけばいいんだなと。

Dr:普段はどのくらい準備期間があるんですか。
戌井:普段は2週間くらいで1週間くらいでぶわーっと稽古しますね。僕が全部書いてるんで。
Dr:じゃあ1週間前にはもうできているということですね。
戌井:はい、1週間前に完全に脚本とかができてて、そこでああして、こうしてってキッカケだけを決めていけばできるんですよ。あとはもうみんなが「いきましょう」って勝手に高まってきてくれれば。

Dr:演出は牛島さんが担当ですか?
戌井:演出は基本的に野放し。
Dr:怒ったりはされるんですか。
牛島:あんまり怒ったりしませんね。
戌井:一回僕がゲネの時にガムを噛んでて台詞しゃべったらガム落としちゃったんですよ。
渡部:ガムだから粘り着くからイヤじゃないですか。だからゲネを中断してガム探してたら牛島が何してるのって。「いや戌井がガム落として」って言ったら「何でガム噛んでるの!?」ってあの時の彼は怖かったですね。
戌井:でも時間が長くなったらやばいから「見つかった!」って見つかった振りして、後で見たらスーツの襟についてました。

Dr:二次審査会を観たときから僕が今回一番関心を持ったのは、ちょっと毛色の変わった人たち、不思議な人たちっていうかルーツの分かりづらい人たちが来たなっていう感じなんですよ。その辺を聞きたいなと思うんですが、例えば横のつながりなんてのはあるんですか。
戌井:大学が終わってから文学座にいたんですよ。
Dr:文学座ですか?
戌井:ええ、でもだんだんフラストレーションがたまってくるんですよ。あれはやりたくないとか。それで新しいのを作りたいなと思って、大学の時の同級生とかで前にやっていた劇団を始めたんです。
Dr:それは演劇をまともにやってた人たちで?
戌井:ええ、まあ演劇がさかんな大学で。でも今残ってるのはもう4人くらいで、あとはどこかでお芝居やったりとかもしてない人たちですね。
Dr:文学座の人とかは観に来るんですか?
戌井:観に来てた人も最終的にはみんな来なくなっちゃいました。だから横への広がりってないですね。小劇場界での欲望も特にないですし。でも昔からゴキブリコンビナートの噂は聞いてたんですよ。うちはネギで殴り合うシーンがあるっていう話をしてたらゴキブリコンビナートはキムチをぶちまけるって。
Dr:キムチは痛くないですからね。
戌井:公演はいつからなんですか。
Dr:22日からです。すぐなんですけど。
戌井:絶対観に行きますから観に来てくださいね。
Dr.:いや、ちょっと無理ですね。すいません。

(↓ここからえんぺのみに掲載)

対談2 Dr.:今度豚を使おうかと思ってるんです。
戌井:僕らは一度舞台で使ったことありますよ。豚ってでも清潔好きで神経質なんですよ。ちょっと持ち上げると「ビャー」ってすごいんですよ。あんまり臭いからお茶かけたんですね。カテキン作用でと思って。そしたら余計ものすごい臭くなっちゃって。あいつら清潔好きのくせにその辺でうんこするんですよ。で、自分でその辺にうんこするくせに自分の居場所が汚くなるとギャーギャーうるさいんですよ。もし豚を買ってきたら豚の飼料でなくてドッグフードを食べさせるといいですよ。ドッグフードだとうんちが固くなるんです。
Dr.:はい。
戌井:ドッグフードおすすめ。

渡部:僕が養豚場から買ってきて、とりあえず移動の時は首輪させとけばいいかなって町田の東急ハンズで買ったんですよ。でも首輪させようとしたらもう命がけで逃げ出して、4階建ての立体駐車場で追っかけっこでしたよ。やっとこさつかまえて抱きしめてたら周りの女の子に「かわい〜」とか言われて「かわいいじゃねえよ!」って。
戌井:みんなかわいいと思ってるけど、あれはもうとにかく家からいなくなってほしいものでしたね。
渡部:持ってく場所がなくて、戌井の家で保管しようって事になってトイレを間仕切りして豚小屋にしたんですよ。そうしたら豚が緊張してどんどんうんこするでしょ。俺と戌井とずっと掃除してました。
戌井:でも床のうんこを洗う経験ってないじゃないですか。何を使っていいかわからなくって、シャンプーとか色々混ぜて使ったら初めての臭いがしましたよ。
渡部:終わったら中華街持っていって食べようって話になってたんですけど、みんなはかわいそうとか言ってるんで、お客さんに豚飼いたい人募集って言ったらひとりいたんですよ。終わってからいざ渡そうとなったらやっぱりこの子じゃ無理だ、飼えないと思ったんでやっぱりお断りして養豚場に返しに行きました。
Dr.:HPには喰ったって書いてありましたよ。
戌井:喰うときはね、やっぱり肉屋に持っていった方がいいみたい。豚って殺すとぱっと全身にアンモニアが回って、もう喰える肉じゃなっくなっちゃうらしいですよ。舞台ではどういう風に使うんですか。
Dr.:薬中の収容施設みたいのがあって、廃人寸前の人からいなくなるんですよ、社会復帰しましたとかいって。おかしいなと思ってると豚の餌になってるっていう。

渡部:養豚場の人にひとつだけ注意されたのは豚が走り出したらなんとしても止めてくれって。なんでかっていうと彼らは恐怖から逃げるためには走って走って走って、そして急に死ぬんですって。これが本当の頓死。普通の動物は肉体の限界まで逃げるんですけど、豚は肉体の限界を超えて逃げるんですって。で、走ってる途中で急に足が止まって、それでもう死んでるんですって。だから本当に走り出したら体をはっても止めてって言われましたよ。
Dr.:豚ってストイックな動物なんですね。


出演者一言インタビュー

戌井昭人 「おねがいします」
内倉憲二 「思わせぶりで」
中島朋人 「よろしくおねがいします あーくそ」
渡部真一 「ご縁があれば」
南辻史人 「がんばります」
桜庭勉蔵 「さようなら」
中座宙太 「笑ってください」
宗形智支甲 「どうも」
馬場寿子 「こんにちは」
田山雅楽子 「よろしく」
大屋典子 「パパイヤマンゴがんばります。」
小山田歯欠 「楽屋に花の差し入れをお願いします」


レポーターDr.エクアドルの感想

 あれ?みんな靴下でやってるのね。そして、声も小さい。全てが淡々と、静かに進行していく。もしかして静かな芝居? そんな馬鹿な。
 だが、セリフの内容を聞いていると、どう考えても叫んだりするセリフだ。ひょっとして稽古場の制約? 大声を出すと怒られる施設なのだろうか。あるいは、今日はたまたま段取り確認の日なのだろうか。だとしたら、今日来たのはハズレだ。
 横になって寝に入ってる者がいる。稽古している横で、稽古の声と同じ大きさの声で演出家さんがスタッフ打ち合わせをしている。ふと横を見るとビールの空き缶が置いてある。ラフなのかシステマティックにきっちり進行しているのか判断に苦しむ。
 だらだらした感じはしない。体育会系的な熱い統率体制もない。通常の劇団の稽古とは少し違う不思議な雰囲気。もっとも通常の劇団の稽古の形について、私は多くを知らないわけだが・・・。
 動きのかなりの部分ができあがって仕上げの段階に突入しているようで、演出家さんも途中で止めたりとかしない。怒ることも灰皿を投げることもないし、ゴキブリコンビナートでの私のように突然頭を抱えて転げ回ったりすることもない。
 切れ目に手を叩いたりしないのは好感が持てる。作りこみ度の強い劇団に限ってやるアレが私は大嫌いだ。演出家が手を叩かないとテンションが上がらないなんて抜かす役者は一生作り物臭いキャラで終わることだろう。
 稽古後、劇団の方から衝撃の事実を知る。大声、暴れは本番までとっておくそうだ。稽古場での稽古は静かな段取り確認に終始して、いきなり、初日に全力投球! 大暴走!
 正しい! 正しすぎる! 目からウロコが落ちた。きっと本番では予想もしなかったことがいっぱい起こるのだろう。そして、余裕のない状況で死にものぐるいで対応していくのだろう。ライブとは何か、生で観せることの意味とは何か。彼らはよく分かっているのだ。よし、僕らもやろう!(嘘)。
 よくできた演劇なんて別に観たくない。ただ、面白い事件に出くわしたい。刺激的な体験をしたい。そう思って舞台に行く。魅力的な人物に出会いたい。それは必ずしも演技の上手い人間ではない(それはそれで武器の一つだろうけど)。演劇鑑賞眼に長けた人を喜ばせたってしょうがない。そう思って日々を過ごしている別段演劇ファンでも何でもない普通の人間の(だけど何故か舞台に関わっている)自分には非常に興味深い演劇づくりの光景でありました。

Dr.エクアドル ゴキブリコンビナート Dr.エクアドル

ゴキブリコンビナート公演情報
12月22日〜25日
法政大学学生会館大ホール
お問い合せ:03-3382-3284


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にしかど (nskd@enpe.net)