第11回ガーディアン・ガーデン演フェス&「えんげきのぺーじ」連動企画

稽古場レポート「ヨーロッパ企画」編


●
上田誠(ヨーロッパ企画)vs内藤達也(bird's-eye view)●

●出演者一言インタビュー●

●内藤達也(レポーター)の感想●


第11回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバルのトップバッターは、京都で活動を続ける劇団「ヨーロッパ企画」。主宰の上田さんをはじめ、多くのメンバーがまだ学生という若い劇団ですが、二次審査会で魅せた実力には、多くの注目が集まっています。今回の稽古場レポートは、前回のフェスティバルに参加した「bird's-eye view」の内藤達也さん。京都は同志社大学まで遠征したレポートです。(事務局)

稽古場3再演にもかかわらず、台詞がまったく入っていない役者陣。稽古は台本に目を落としながら続く。上田さんいわく、相当緊張しているんだそうです
「冬のユリゲラ−2002」はタイトル通り超能力の話。超能力を使っているシーンです。念を送っているのが役者の石田さん。ジャージが似合ってます稽古場1
稽古場2演出する上田さん。失礼ですが天然の関西系ボケ顔。そんでもって同志社大工学部在籍。物理の問題で解けないものはないという噂だが、留年決定
稽古を真剣に見つめる内藤さん。役者陣を見る眼差しは、レポーターではなくあきらかに演出家。ちなみに京都に来たのは修学旅行以来なんだそう稽古場4


上田誠(ヨーロッパ企画)vs内藤達也(bird's-eye view)

■今日だけ特別にジャージです。

内藤:稽古はいつも学校の会議室でやるんですか?対談1
上田:そうですね。僕らは「ヨーロッパ企画」というサークルで登録しているので、申請すれば使えるんです。
内藤:みなさん、仲良さそうですね。
上田:3年経ちましたね。
内藤:うちは3年も経つと、プライベートではあまり会話もないんですよ。
上田:その点ではうちはすごく仲いいですね。だいたい僕の家に誰かしらいる状況ですね。うちの実家は焼き菓子の工場なんですけど、そこの離れをアジトにしてます。
内藤:旗揚げから大体同じメンバーで?
上田:そうです。旗揚げの時は二人芝居だったんですが、そのあと二回目でドッとメンバーが増えました。
内藤:多少年齢差もありますよね。一番上の方でいくつなんですか?
上田:僕より2つ上で25歳です。その人が「ヨーロッパ企画」の発起人なんですよ。同志社小劇場という劇団にいたんですけど、学生劇団にありがちな体制で、それに入っていけずに影をひそめていた人たちで仲良くなって始めたんです。
内藤:じゃあ上下関係みたいな厳しさはないんですか?
上田:ないですねえ。先輩後輩というのはあるにはあるんですが、ざっくばらんとしてますねえ。
内藤:今日の稽古では役者のみなさんは無駄話もなく、淡々と進んでいったんですが、普段からそうなんですか?
上田:これははっきりいって、この日のための作戦会議をしたくらいですね。いつもと同じじゃまずいぞと。普段ジャージを着ない人も着てみたりとか。
内藤:確かに今日もジャージを着てない人もいましたね。
上田:普段は9割8割くらいはジーパンなんですよ。トレーニングもしてないし、雑談も多いんです。休憩がとりとめもなく続いたり。
内藤:うちも全部雑談で終わったりすることも。
上田:どこもそうなんですかね?
内藤:そんなことないですよ。真面目なところは真面目ですよ。でもその割に、役者さんはみなさん若いのに上手いんですけど、訓練法とかあるんですか?
上田:これは持論なんですけど、訓練というより普段から仲がいいということがあって、お互いにコミュニケーションがとれてる状況なんで、会話のキャッチボールでも、「普段」が反映されている気がします。かなりその辺の普段の暮らしぶりが活きている気がしますね。
内藤:普段の稽古で、いきなりエチュードやったり、台本やったりなんですか?最初に発声の訓練とかはしないんでしょうか。
上田:それは最近課題になってきてるところなんですけど、肉体訓練というのはあまりしてこなかったんですね。こういう芝居なんで怠りがちだったんですよ。それで微妙なニュアンスとかは出せるんですけど、基礎力という部分でやっぱりしっかりしていないというところが、最近自分たちでもったいないなという気はしてます。でもメソッドが分からないのでどうしよう、といいながら…、という状態ですね。

■間抜けで牧歌的なイメージ

内藤:集団維持で気を使ってることってありますか?
上田:割と個人主義といいますか、劇団としてヒエラルキーがあってというのではなくって、システムもしっかりしてるとかでもないんですよね。みんなでお金を出しあって、ノルマもなくって…。だからあんまり集団を抱えてるという意識がないんですよ。仲がいい人たちで集まったという感じなんで。そういう意味で主宰してるという意識はあまりないですねえ。劇団ヨーロッパじゃなくて、ヨーロッパ企画にしたのは、風通しを良くするという意味で「劇団」ではなく「企画」にしました。コントビデオを作ったりとか、CD作ったり、HPの企画をしたりとか、今度DVDを作るんですけど、みんなの特性を活かしていろいろ出来ればいいなと。
内藤:「ヨーロッパ」ってなんで付けたんですか?
上田:みんなで話し合ってたんですが、カタカナの間抜けさ、でしょうか。当時、地元の劇団を抜けて作ったのでアグレッシブに見られたので、あまり嫌われないような、やんわり可愛らしげなのがいいかなと。
内藤:じゃあ、意味はなく、言葉の響きで?
上田:そうですね。「ヨーロッパ」という間抜けな響きで。牧歌的な感じがいいかなと。「bird's-eye view」という名前は、含蓄がありますね。
内藤:最初は嫌われるつもりでスタートしたんですよ。旗揚げのときにいろいろな劇団からいい役者を連れてきて、敵を作って始めたんですよ。よく「すかしたイヤな奴ら」っていわれるんですけど、最初は意識してそうしてました。
上田:僕らは逆に猫をかぶってました。

■みんなよく東京に遠征しています

内藤:今回の「冬のユリゲラー」は再演ですよね。再演するというのは初めてですか?対談1
上田:いや、一回やったことあります。
内藤:再演するということで、今回注意していることってあります?
上田:書き換えようって始めは考えていたんですが、初演のときも1年越しで考えて書いたものだったんで、書き換えるところがなかったんですね。なので台本を変えるというよりは、前回のを煮詰めてお客さんにも分かりやすくしたり、完成度を高くしてバージョンアップするような感じですかね。
内藤:東京進出は考えてますか?ガーディアン・ガーデンとE1グランプリと両方やるんですし。
上田:応募したら結果的に2個とも受かった、ということなんですが、東京に遠征に行くのはお金の問題がかなりのウエイトを占めているんで、今回のような演劇祭があればもちろんいいんですけど、どうなんでしょうか…。もちろん東京でやりたいというのは凄くあって、開拓という意味もあるんですけど。結局東京にいっちゃった方が早いという気がして。京都にも文化に対する土壌自体はあるんですけど、そこを開拓してるよりは東京に行った方が結局早かったりすると思うんですよ。みんな結構東京行ってますし。
内藤:東京によく行くんですか?
上田:みんなよく東京に遠征しますね。平均すると2ヶ月に1回は観に行ってるかな?
内藤:凄いですね。僕は京都に来たのは中学の修学旅行以来ですよ。東京のお芝居だとどんなの観ますか?
上田:この前メンバーが観てきたのは、「トリのマーク」で、他にも「サモ・アリナンズ」「動物電気」「ナイロン」「ハイレグ」とかを観てきたみたいです。華やかな感じがあって憧れますねえ。
内藤:大阪の転球劇場とか東京で話題になってますよ。
上田:そうなんですか。でも「ゴキブリコンビナート」とか「bird's-eye view」といったエンターテインメントでかつ刺激のあるものが一切ないんですよ。
内藤:とにかく東京進出の第一歩として公演是非成功させて下さい。
上田:がんばります。
内藤:期待してます。ヨーロッパ企画東京で話題になってますよ。やっぱり年齢のわりにレベルが高いですね。いい役者さんがこれだけ揃ってるし。
上田:でも京都では下手だって評判ですよ。


出演者一言インタビュー

(氏名/今回の公演にむけてのひとことコメント)

石田剛太 「はじめて東京でやるのでソワソワしているのですが、飽きさせないようがんばります 」
酒井善史 「舞台美術もやっています。今回セットが喫茶店ということで、100軒の喫茶店に行きました。でもセットよりも芝居を見て下さい」
諏訪雅 「今回僕は超能力者の役をするのですが、今、役者として一番悩んでいることは青い気とかをどう出すか」
瀬戸中基良 「がんばります。わりかしお洒落を」
玉田晋平 「わりかし面倒くさいキャラなんです」
永野宗典 「のびのびやりたいと思います」
本多力 「テレポーテーションを見に来て下さい。私のテレポーテーションを見たらみんなびっくりします。京都でもみんなびっくりしてました」
中川晴樹 「何もかもめんどくせー」
松田小箱 「明日テスト2本とレポートがあるので大変です」


レポーター内藤達也の感想

某日夕方、京都駅に到着。思っていたより寒くはない。
地下鉄にて移動。彼らの本拠地である同志社大学に向かう。
到着後、劇団の方の案内で稽古場に入る。
大学の会議室といった感じの場所。
おそらく稽古に使っているであろうテーブル以外は端に寄せられ、正面に演出席。
見た所、京都だからといって、変わった所はない。
だが、彼らの雰囲気はちょっと緊張気味である。
初対面の僕がいきなり稽古場に来たのだ。無理もない。

さっそく稽古を見せてもらおうという時に役者の石田さんから、 「以前、本多劇場でお会いしましたよね」 と言われる。 ここまで初対面と言っておいて、実は初対面ではなかった。 失礼な話である。 「そういえばそうですね。ごめんなさい。忘れてました」 と僕は答えるが、一向に思い出せない。 さらに、失礼である。

稽古開始。役者はそれぞれ台本とペンを持ち、動きながらの稽古。 稽古しながら、演出の上田さんは気になる箇所があるたびにシーンを止め、 ダメ出し、同時にセリフの修正も行う。役者たちに私語はない。 ビックリするぐらい真面目である。 この真面目というのは、ありがちな、生真面目というやつではない。 役者それぞれがひとつのポイントにある、 ヨーロッパ企画の面白さ、というものを明確に持ち、 上田さんが理論的に提示した流れというものをくみ取って、それをこなす。 そういった真面目さだ。 しかも、そういった稽古で起こりえる、 役者のつまらなさみたいな怖れはここにはない。 なんといっても、役者が達者なのだ。 それぞれのキャラクターが立った上で、出過ぎることもない。 全員が全員、長年付き添ったパートナーであるようなセリフのやりとりは見事である。 こういった集団は以外にも、そうお目にかかれるものではない。

稽古中、シーンを止めるたび、上田さんは 「すいません。みんな緊張してるようで」 と、何度このセリフを聞いたことであろうか。 上田さん、そういってるあなたが、一番緊張してましたよ。

稽古終了後、役者さんたちを含めて飲みに行く。 それにしても仲がいい。 話によると、ほとんどみんな一緒にいるそうだ。 集団にとって、それが必ずしもプラスに働くとはいいがたい。と、僕は思う。 しかし、ヨーロッパ企画の魅力的なわけはここにあると思わざるをえない。

「もうすぐ凄いやつらが東京にやってくる」 この言葉は、今、彼らの為にある。

でも、本番は緊張して失敗しないでね。

                      bird's-eye view 内藤達也


[ヨーロッパ企画Top]

-------------------------------------------------------------------

にしかど (nskd@enpe.net)