第11回ガーディアン・ガーデン演フェス&「えんげきのぺーじ」連動企画

稽古場レポート「庭劇団ペニノ」編


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タニノクロウ(庭劇団ペニノ)vs戌井昭人(鉄割アルバトロスケット)●

●出演者一言インタビュー●

●戌井昭人(レポーター)の感想●


第11回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバルの三週目を飾るのは、庭劇団ペニノ。劇団としてはまったく無名のペニノですが、二次審査会のプレゼンテーションで見せたミステリアスな魅力で、ダークホース的に出場権を獲得しました。つまりその全貌はまだまだ未知。今回のフェスティバルではいったいどのような作品を創りあげるのでしょうか?興味津々。稽古場レポーターは鉄割アルバトロスケットの戊井昭人さんです。(事務局)

稽古場1演出中のタニノさん。けして休憩しているわけではありません。威張っているわけでもなければ、やる気がないわけでもなく、いうなれば自然体
現在も通っている大学の体育館がこの日の稽古場。有余るスペースを贅沢に使用。正直これだけ広いと、どこを使って稽古していいのか悩んでしまう稽古場2
稽古場3タニノさんは役者さんを「天使」と表現します。その理由を問うと、「男でも女でもなく、天使。いちおう感謝の気持ちもこもっています」とのこと
レポーターの鉄割アルバトロスケット代表の戌井さん。メモを片手に片時も稽古から目を離しません。演劇に対する真摯な姿勢がにじみ出ています稽古場4


タニノクロウ(庭劇団ペニノ)vs戌井昭人(鉄割アルバトロスケット)

■演劇を作った後の感じ方

戌井:韓国の現代美術のアーティストで、トラックの荷台にいろんな色の布団を載せるだけ載せて縛って走っていくという作品がありまして、そんな感じがしたんですけど…。
タニノ:イメージが?対談1
戌井:そう。最初30cmくらいのトラックなんですけど、ドンドンドンドン、デカくなっていって、今日も稽古場で色んなものが散らばってましたけど、そういうものがトラックにボンボン載っけられていって…、ペニノさんの場合、最後は壁にぶつかる感じなんですか?それともどこか地平線に去って行く感じなんですか?狙いとしてはどっちなんでしょう。
タニノ:どちらかというとシューっと消えていく方ですね。なんでかというと、僕はもともと恥ずかしさがありながらやってるんですよ。演劇やってみようかなって思ったのも、もし演劇が芸術とかの括りにあるんだとしたら、ちょっとヌケてるんじゃないかって…。僕、絵を描くのが好きなんですよ。粘土細工とか、そういうのを作るのがすごく好きだったんです。作って人に見せるものって結構隙がないというか。でも演劇って時間も限られてて、一人でやってるわけじゃなくて、お客さんの見えないところがあったりしますよね。パネルの裏はただの木だったりして、恥ずかしいというか、哀しいものなんじゃないかなって思って。なんか隙があるというか、隙だらけの面白さというのがあるのかなあって。それで挑戦してみたいというのがキッカケだったりするんですよね。なんかこう…むなしいような。
戌井:はかないような。
タニノ:そういうものを作った後の感じ方を知りたかったということもありますね。出来上がって見せた後、自分はどう思うのかなあって。
戌井:台本書くときは自分で意味は通じてますか?
タニノ:完璧に通じてますね。通じてるっていうか、ものとしてはあると思うんです。
戌井:話のつじつまより、何でそれが出てきたかということは自分でははっきりしてる?
タニノ:はっきりしてる、はっきりしてる。アンケートで意味が分からなかったという声がすごい多かったんですよ。絵を描いてもそういうことをいう人はいなかったんですけど、言葉のせいだと思うんですけど、見る人にとってはそんなに意味が大切だったりするのかなあって。
戌井:意味って大切だと思います?
タニノ:いや、僕は思わないです。
戌井:僕もまったく思わないんですよ。

■アングラを苛める

戌井:アングラっていわれてたりしますけど。
タニノ:僕にとってどうしてもいじくりたくなるジャンルなんですよ。その世界にどっぷり浸かりたいというわけではなくて、その世界を引っ張ってきて味付けしたいと思いますね。どういう経緯でアングラが出来上がったかとか、あまりにも昔のことなんで興味がないんですけど。なんかこうくすぐったいような、苛めたくなる感覚と似てると思うんですけど。
戌井:アングラの湿った空気をカラッとさせたいとか思いますか?
タニノ:ちょっと外れるかもしれないんですけど、もともと演劇って貧乏くさいイメージがあって、全然儲からないとか観る人も少ないというのを聞いていて、でもその一方で「それでも僕は好きだからやります」という人も沢山いたりして、だから状況変わらないというか。あまりにも貧乏臭くって、やっぱりこういう人たちはそれでも好きだからっていうのでやってるんだなあ、と思いまして。そこを苛めたかったというか。なんかこうくすぐられるものがあったんです。
戌井:じゃあ、そういう集団の熱い思いみたいなものはない?
タニノ:作るときですか?
戌井:うん、作るときに。熱さ、熱さっていうか…、団結心かな。
タニノ:ないですねえ。宴会も盛り上がらないですよ。今回新しく参加してくれる人が4人くらいいて、その顔見せという意味で年末に飲み会をやったんですけど、まず話さないですからねえ。
戌井:まったく演劇やってない人、例えば街歩いてて変な人と知り合ったりすると無理矢理出しちゃったりしませんか?
タニノ:やってみたいですね。
戌井:僕のところは半分くらい経験のない人で、無理矢理連れてきて蕎麦だけ食わせたりとか。だけどその人たちって、本当におかしいヤツはそのままでいてくれるんですけど、段々やりたい心が出て来ちゃうんですよ。
タニノ:ああ〜。ありますね、それ。なんか悲しいですよね。妙に考え出したりとか。昔だったらこの台詞は読めてたのに、こいつはもう読めなくなったな、とかありますね。
戌井:説明なんだけど説明をしないでしゃべってほしいとか。
タニノ:昨日も昔のビデオをぽろっと見て大笑いしてました。役者の連中はみんなほとんど経験なかった状態で、なんか面白かったですね。役者さんてテクニック的に成長して、いろいろと検証し出したりするんですよね。上手くなろうという気持ちがちょっと芽生え始めたりすると、それを滅茶苦茶に壊すのもなんか悪いような気がしてて、それだったらそれに見合うものを演出なり、しなきゃいけないのかなあ、っていうのは思ってますね。まあそういう思いはあんまり続かないと思うんですけど。
戌井:練習はたくさんするんですか?
タニノ:うち本当に練習するんですよ。脚本は滅茶苦茶だけど、スタンダードな動きっていうのをやらせるんです。それが出来るまで壊さない。面白いギャグの部分も消したりしてスタンダードで何度も流させるんですよ。ありえないことはまずないという状況を作って。すごく時間がかかるんですけど。
戌井:今回の練習って時間的にどのくらいですか?
タニノ:2ヶ月くらいですね。

■富山といえばロカビリー

戌井:そういえば、応募ビデオ見ましたが、茶の間のセットでしたよね。畳を使うことは多いんですか?
タニノ:そうですね。畳は好きです。対談2
戌井:畳はもらってくるんですか?
タニノ:家の畳を持って来たりします。今回の公演はあまりに枚数が多いんで、持ってこられなくてゴザを貼り付けることになりました。
戌井:畳って捨てるの大変なんですよね。うちも前回ガーディアン・ガーデンで畳を使って、捨てるのが大変でした。
タニノ:どうしたんですか?
戌井:潰れる小学校があって、そこに捨てに行きました。中が発泡スチロールで出来てる畳は結構簡単にもらえるんですよ。軽いやつ。でもあれは有害廃棄物になっちゃって捨てづらいんですって。普通の畳は畑に持って行くと、そのまま肥料になるんです。で、茶の間とか結構好きなんでしょうか?
タニノ:え?茶の間…ですか?
戌井:日本的な感覚というか。
タニノ:実家がそうだからだと思うんですけど。
戌井:実家はどこですか?
タニノ:富山です。実家の敷地の70%くらいがお茶室とかなんですよ。
戌井:え?7割がお茶室?
タニノ:ええ、なんでだかわからないんですけど。習字をやる部屋とか、狂言をやる部屋とか。
戌井:ご家族が何かそういう関係のことをやってるんですか?
タニノ:親父が狂言とか好きですね。
戌井:太郎冠者次郎冠者とかですかね。
タニノ:さあ、ちょっと分からないんですけど…。
戌井:あと富山といえばロカビリー。
タニノ:そうですね、発祥の地なんですよね。
戌井:ロカビリーは通過されたんですか?
タニノ:全然してないですね(笑)。
戌井:なんかすごいんですよね、ロカビリーが。
タニノ:小学校のときとか凄かったですね。祭りがあると円陣組んだりして。僕がやったわけじゃないですけど(笑)。
戌井:話は代わりますが、100より0の方が好きですか?
タニノ:なんか難しいですねえ。100を狙った0が一番好きですね。
戌井:おおー、いいことですねえ。「0とトラック、0とトラック」って稽古を見ながら思ってて。トラックはトラックだと思うんですよ。タニノさんがみんなを乗せたトラックをノロノロノロノロ運転してって、トラックの荷台がぐちゃぐちゃになっていく感じで、それでどこかに行っちゃう、という感じがしたんです。本番を見ないでいうのもなんなんですけど。
タニノ:ああ、そういう感覚はあると思いますよ。
戌井:自分で運転する方っぽいですよね?こっち行って、あっち行って。
タニノ:そうですね。その荷台がぐちゃぐちゃっていうのは、やっぱり炸裂するのを待ってるというか…。とりあえず詰め込んで、どっかでたまたま隣り合った何かがボーンって新しい何かが出来たりする楽しみみたいな気分ですね。


出演者一言インタビュー

(氏名/今回の公演にむけてのひとことコメント)

石渡崇徳 「上がり性なので、上がらないように本番やろうと思います」
服部憲路 「僕ちょっと頭が悪いんで、いいコメントが思い付かないです(Q.気合い入ってますか?)……いつもと同じ」
新井勝人 「芝居をシンプルにやりたいです」
黒崎愛 「(Q.ペニノの魅力は?)……くだらないことを真剣にやっているところに惹かれた。人見知りそうなところに共通点を感じて、仲良くなれそうだなと思いました」
白鳥稔恵 「棒とかで結構ぶたれっぱなしです(Q.不満はありますか?)……今のところはまだないです」
若挟ひろみ 「面白いので観に来て下さい」
山本雄生(町奴) 「Q.一緒にやろうと思ったキッカケは?)……公演が決まってなくて暇だったから。二次審査会のときあまり見てなかったけど、懇親会で話して「いい人たちだな」と思ったので。」
※山本雄生さんは
ガーディアン・ガーデンの二次審査に出場した「町奴」の主宰者。黒崎愛さんも「町奴」のメンバー


レポーター戌井昭人の感想

大きな体育館に、鳥とか椅子とかザルとかペニスとかボールとかが散らばってる。稽古場の体育館に到着するとペニノの皆様は休憩中で缶ジュースを頂いた、ありがとうございます。
後、ボール蹴飛ばして少し遊んだ、演出タニノさんが、なんとなく定位置に付くと、稽古もなんとなく始まっていった。タニノさんはボールに座ったり、寝転がったりしながら、静かに演出をしていきます。その姿を見て僕は安心して稽古を覗くことが出来ました、煙草をズバズバ吸いながら怒鳴り散らしてたら参るなと思ってましたが、その心配は全くありませんでした。
稽古を観る限り、一体どのようなものが出来上がるのか全く想像がつきませんでした(たった1時間だけ観て理解しようとするのもなんだけど)ただタニノさんの頭の中は少し覗けたような気がします、何もないだだっ広い体育館だけど、彼の頭の中には本番の舞台の有り様、全てが見えてるんだと思った。そんなの演出家として当たり前だろ、とおっしゃる方もおるだろうが、実際、偉そうに理屈ならべ立てて、頭ん中の完璧っぷり見せびらかす奴に限って、何も分かって無い。その点タニノさんは静かに先導してゆき、大変好感が持てた。その姿はダダッ広い荒野をトラックでゆっくり運転してるようで、荷台には役者や音楽や光やペニスやザルや椅子や様々なものがグッチャグッチャに乗っかていて、荒野の先、夕日が沈む方へ向かって行く感じでありました。
タニノさんはトラックを運転し、ペニノさんは荒野の先を目指す。其処に答えがあって、お客さんが「100」を感じても、瞬時に「0」に戻されるから、理解とか理屈を越えた何かを、心地よく受け入れる心持ちが必要です。荒野の先、美しい夕日を眺めてたら、眩しくて、目玉が焼けて目玉焼きになってしまったようなもの。

                        鉄割アルバトロスケット 戌井昭人


[庭劇団ペニノTop]

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にしかど (nskd@enpe.net)