第13回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバル&「えんげきのぺーじ」提携企画

稽古場レポート<チェルフィッチュ編>


●出演者に質問!●

●岡田利規(チェルフィッチュ)vs杉本隆吾(CLUB ORGANISM)●

●杉本隆吾(レポーター)の感想●



第13回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバルのトップバッターは、独 特なスタイルで注目を浴びている劇団「チェルフィッチュ」。その秘密(?) の稽古場に、前回のフェスティバルに参加したCLUB ORGANISMの杉本隆吾さん が潜入。あの作品は、いったいどのようにして生まれるのでしょうか。(事務 局)

稽古場1 レポーターは前回のフェスティバルに出場したCLUB ORGANISM主宰、杉本隆吾さんです
この日の稽古は二人の女優さんのシーンがメイン。わずか数分のシーンを何十回と繰り返し稽古していた 稽古場2
稽古場3 語り部的役割を担っていた役者の山縣太一さん。チェルフィッチュでは古株。 この日誕生日を迎えた
稽古では自分の出番でない役者も、稽古に集中。演出家の指導を自分の演技 にフィードバックさせている 稽古場4
稽古場5 チェルフィッチュの台本は台詞が長い。役者はそのひとつひとつの台詞をイ メージで紡ぎあわせていく
ときには岡田さん自身が立って演技指導する場面も。役者の動きから、なに かを導き出そうとしている 稽古場6
稽古場7 個性的な動き、不明瞭でリアルな台詞。現代を切り取るチェルフィッチュの 作品はまさに新しいスタイル
映画を志しつつ演劇へ。現代劇の可能性を追求するチェルフィッチュ岡田さ んの話は杉本さんとの対談で! 稽古場8


出演者に質問!

CLUB ORGANISM 杉本さんから
チェルフィッチュの役者に質問!

「今まで見た映画、芝居で、自分が演じてみたい役は?
またその理由は?」

(後列左から)
●瀧川英次「サボテンブラザース」マーチン・ショートのやっていた役。やるときはやる、というかっこいい役だから。●山崎ルキノ「猫が行方不明」クロエ役。猫を探す話。映画自体が好きでクロエの雰囲気も好き。猫も好きだから。●山縣太一「ミラーズクロッシング」ガブリエル・バーンのやっていた役。父が芝居をやっていて、悩んでいると「初心に帰れ、観ろ!」と言われて今までに32回くらい観ている。

(前列左から)
●下西啓正「マウス」ロバート・カーライルのやっていた泥棒の役。奥さんに泥棒をやめろといわれてもやめない成長しないダメなところがいいなと思ったので。●江口正登「Helpless」光石研沙がやっていた北九州弁のやくざの役。僕は北九州出身なので、あの北九州弁はちょっとよかったなと。●東宮南北「害虫」田辺誠一のやっていた役。宮崎あおいが好きだから。映画では(宮崎を)救えなかったけど救いたいから。●松村翔子「ラン・ローラ・ラン」ローラ役。ローラがずっと走っている映画で、一緒に走りたいと思ったから。髪を赤くしてみたいなと思ったから。

 


岡田利規(チェルフィッチュ)vs杉本隆吾(CLUB ORGANISM)


■何回目の公演かわかりません

杉本:はじめまして。

岡田:よろしくお願いします。

杉本:CLUB ORGANISMの杉本と申します。先ほど稽古場を拝見させてもらいま
したが、今年、ガーディアン・ガーデンの演劇フェスに参加ということで…、
岡田さんは代表になるのですか?

岡田:僕、代表なんです。

杉本:代表。で、カンパニーの中ではどういった役割を?

岡田:えー、脚本と演出。

杉本:脚本と演出…。全部自分で書かれてるのですか?

岡田:そうです。

杉本:先程稽古を拝見させてもらったですけども、あの本は今回新作ですか?

岡田:はい。

杉本:このフェスティバルへの出場が決まってから書かれたのですか?

岡田:そうです。

杉本:イメージとか、こういうのやりたいなぁっていうのが以前からあったの
ですか?

岡田:ええっと、そういうのは無いんですけど、まぁ、書き始めたのは決まっ
てからですけど。

杉本:これまでどのくらい?何本目というか。

岡田:えぇっとー…。

杉本:いつぐらいから本とか書かれてるのですか?

岡田:初めて芝居の脚本を書いたのは、大学一年のときです。本当はもっと小
学六年生のときとかに書いたりしてるんですけど、それは自分でも忘れちゃっ
たんで。
芝居を始めたのは大学入ってからで、それで一年生の学園祭のときに、ちょっ
としたちっちゃいものを書いたのが、まあ、初めてで。これで何本目かなぁ。
ちょっと数えてないんですけど、チェルフィッチュを旗揚げしたのが97年で、
それからえぇっとねぇ、…何本公演をしたのかなぁ。

杉本:何回目かわからないと?

岡田:えっとねぇ、ちょっとわかんないです(笑)。この前ホームページを更新
したときに、一応これまでの公演の経歴も書いたので、それを数えれば本数は
わかると思うんですけど。

杉本:(笑)じゃあ、これ読んでる皆さんは、是非、ホームページでチェック
してみてください。

 

■最初は映画を志していました


杉本:そもそも何で本を書こうと?最初からお芝居だったのですか?

岡田:違いますね。うんとー、最初は多分、映画をやりたくて。

杉本:ええ。

岡田:それで入ったところが、映画もやってたところだったんですけど、演劇
もやるっていうのがうたい文句のサークルで、それで最初は映画がやりたくて
入ったんですけど、実際は演劇ばっかりやってて、それでもう流されて。最初
は照明スタッフの手伝いもやってました。その流れですね、脚本を書きはじめ
たのは。

杉本:その前から、創作意欲みたいなものは?

岡田:「書きたい」とかいうのはありましたね。高校生のときも。

杉本:何かを創りたいっていう?

岡田:うん。小説みたいなのを書きたいと思ってましたね。でも…、書き始め
たことは何回もあるんですけど、完成したことは無かったですね。で、その大
学一年のときに書いたのが、短編なんですけど、初めて最後までいったんです
よ。

杉本:僕も最初は音楽でしたね。芸事っていったら変ですけど、映画とか音楽
とか演劇とか。表現の手法と言うか、「畑」っていっぱいあるじゃないですか。
で、僕は音楽が始まりでしたが、岡田さんの最初は小説?

岡田:まぁ、本は好きだったんですけど、なんだろうなぁ、いや、映画撮りた
い、映画作りたいなっていうのがあったんですよね。それって中学生くらいの
ときかな。

杉本:何か好きな映画があったとか?

岡田:えっとね、多分記憶でこれじゃないかと思っているのが二本あって、小
学生のときにテレビで「アニー」を見たときに、僕かなり「おぉー!」て思っ
たのと…。

杉本:♪トゥ〜モ〜ロ〜、トゥ〜モ〜ロ〜、ですよね。

岡田:うん。あとはねぇ、中学のときに「ラストエンペラー」を見たときに、
それもすごいショックで。「あっ、映画ってこういうことができるんだ」みた
いなことを思って。こういうのを作る人、作れる人になりたいって思ったこと
はありますね。それは、今でも記憶に残ってるんで。

杉本:作る人になりたいっていうと、書いたり撮ったりとかっていう、いわゆ
る監督業?

岡田:そうですね。

杉本:舞台で言うと演出家のほうに最初から目覚めた?

岡田:役者をやりたいと思ったことは無いですね。



■セルフィッシュ…自己中のちょっと舌足らずな感じ

杉本:で、チェルフィッチュなるものを97年に作ったきっかけって、何かあ
るのですか?それまでは劇団とかは?

岡田:作ってないです。その前の年まで大学にいたんですよ。だから、大学に
いたのでその中でやってたんですけど、卒業してやるとこがなくなって、卒業
した次の年に先輩に呼ばれて脚本だけ書いて、芝居を一本やったことがありま
すね。

杉本:岡田さんが自分で…

(取材日は出演者の山縣太一さんのお誕生日だったので、ここで乾杯)

岡田:太一、お誕生日おめでとう!

一同:おめでとう!

山縣;ありがとうございます。

杉本:岡田さんはお酒好きなんですか?

岡田:好きですね。そんなに飲みませんけど。

杉本:一番好きなお酒って?

岡田:僕なんでもいいんです。なんでもいいんですよ、ホント。

杉本:でもダメなお酒とか嫌いなお酒とか。

岡田:ないです。そんなにないですね。

杉本:ふーん。これ飲んだら酔う、とか。

岡田:日本酒とかは次の日なんか頭痛いとかはあるけど、別に嫌いじゃないで
す。

杉本:僕もね、それがあるので(日本酒は)飲まないですね。飲めない酒は無
いんですけど。
それよりさっきの話なんですが、岡田さんがチェルフィッチュを作って、岡田
さんがみんなを集められたんですか?

岡田:そうですね。

杉本:劇団・・・でいいんですよね?

岡田:うぅんとー、まぁ、いいんじゃないんですかね。体制がそんなにしっか
りしてないんでアレなんですけど。まぁ、僕しかいないんで。

杉本:でも周りの方は基本的にいつも一緒?

岡田:まあ、そうですね。でも役者は変わりますけど。

杉本:まぁ劇団っていってもね、客演さんがいたりね。うちの場合は基本的に
ひとつの公演が終わったら解散なんで、毎回その公演にあわせてメンバーを集
めるんで……、ところで普段どういった劇場で公演されてるんですか?

岡田:最初横浜でやってて、相鉄本多劇場で旗揚げしたんですけど、最近は今
回もそうですけど、東京にも呼ばれたりするようになって、タイニイ・アリス
とか去年は法政の大ホールでやったりとか。あとはチェルフィッチュじゃない
んですけどプロデュースの作・演で呼ばれて神楽坂のセッションの上のギャラ
リーでやったりとか。東京も多いですけど、横浜でもちゃんとやってます。横
浜のSTスポットが僕の拠点なんで。

杉本:チェルフィッチュってどういう意味なんですか?

岡田:えぇっと…

杉本:これは岡田さんがつけられたんですか?

岡田:はい。セルフィッシュ…自己中のちょっと舌足らずな感じ、っていう意
味です。

杉本:うちの前回公演のメンバーにも一人舌足らず(海野幸)がいましたが、
彼女に「せるふぃっしゅ」って言わせればこう読むと思います(笑) で、チ
ェルフィッチュのカンパニーがもっている特長とかテーマとかは、どんなとこ
ろにあったりするのですか?

岡田:うーん、それは…、方法は何かっていう質問ですか?

杉本:うーん、まぁ、岡田さんの仕切りなんで、岡田さんがチェルフィッチュ
をやる意味っていうのがあると思うのですが、そういったところをちょっと聞いてみ
たいなと思って。

岡田:それは僕の場合ほとんど、今、僕がやっている演劇の方法…、その方法
をやるっていうこととほぼ一緒で、演劇をやるとか集団をやるっていうのがそ
れと独立してある訳じゃないんですよね。

杉本:こういうことを伝えたいっていうことよりも、例えば自分の今模索して
る、あるいは確立してる、その手法みたいなのをもっとやってみたいとか。

岡田:そうです。

杉本:そういう「目的」って事ですかね。

岡田:そうです。それです。

杉本:では、その手法みたいなものは?

岡田:そうだなぁ。それを言葉で言うのはすごく難しくて…。例えば今まで僕
のを見てくれて、例えば批評するような人がどういうことを書いたかとか、そ
の人の言葉からいうってことは出来るんですけど、別にこの場でそれをする必
要は無いと思うんですよ。例えば逆に今日の稽古を見て、杉本さんぶっちゃけ
どう思いました?

杉本:はじめての、しかもいきなりの質問がきましたね(笑)。今日は一部分だ
けだと思いますので、作品の全体像とかはわからないですけど、僕も自分で基
本的に作・演をやっていて、わかりやすく言うと、あの…、僕とは全然…、何
ていうんですかね、やり方が違うなっていうのは、感じる部分としてはすごく
思ったんですけど、別にやり方が違うからどっちがいい、悪いとかじゃないし、
今日拝見させてもらったような作り方で、どういうものが出てくるのかなって
いうところが興味深い感じ…。

岡田:今、自分の方法が何かっていうのを自分の言葉にするのは、多分うまく
出来ないんですけど、2001年から今やっている方法になったんですよ。今やっ
ている方法がどういう方法かっていうと、まずは言葉として口語を使っている
ってのがあります。それも僕が普通にしゃべっているその本当にそのままの、
できるだけ口語であるっていうのと、あとはそれに付随して、身体、その言葉
を喋る身体がでてくる。その身体を、気持ち誇張してたりするその身体を見せ
るっていうことが、最近やってること。その二つは意識してるんですけど。だ
からまぁ、方法はそれだけって感じです…。で、その二つを大事にしだすとや
っぱり、創ろうとする物語が、その方法をとる前の話と、その…、前に書いて
いた話と全然変わってきて、例えば今回の作品は去年の三月の話を書こうとし
ていて…、ほぼ書き終わって、まだ実は完成してないんですけど、95%くらい
できてて…。

杉本:大丈夫ですよ。去年の僕は、この時期、台本の完成度は2%くらいでし
たからね(笑)。

岡田:ただ、僕の作品って台詞がすごい長いんで、役者が覚える負荷が尋常じ
ゃないんです。だから、そういう意味で早く台本をあげらなきゃいけないと思
っているんですけど。

杉本:作品自体は何分ぐらいのものですか?

岡田:120分の予定でいたんですけど、休憩付きで90分になりそうです。

杉本:うちは前回100分でつくろうと思っていたら135分になっちゃいました
(笑)。どうも伸びる傾向があるみたいで。

 

■台詞はイメージの中で繋がる

杉本:今日稽古を見ててひとつ面白かったんですけど、まぁ、面白いところはい
っぱいあったんですけど、「タイムスリップ」っていう台詞があるじゃないで
すか。

岡田:はいはい。

杉本:ダーって台詞を喋ってて、ぽつっと「タイムスリップ」って一言だけ、
前後の文章とつながってないんですよね。あの、何ていうんですかね、さっき
おっしゃってたように、口語だからありだとは思うんですけど、「何とかはタ
イムスリップでどうのこうの…」じゃなくて「タイムスリップ」っていう単語
だけポツッと独立してあるのが、僕的には印象的だったんですけど。あれは何
か意識して書かれたんですか?

岡田:もちろん意識してます。というか、あそこは確かに顕著ですけど、ちゃ
んと意味をとっていくと意味的につながってなかったりする台詞ってのを意識
して書きます。それは結局口語がそういうふうに喋られているってことに気づ
いたときに、そのことを面白いと思ったっていうことと、どうしてそうなるの
かみたいな仕組みについての自分なりの結論が出てるんで、それを使って作る
のが面白いってすごく思ってるからなんですけど…。今日も稽古場で「イメー
ジ。イメージ。」って、イメージって単語を連発してたんですけど、「タイム
スリップ」って単語についても、結局、イメージの中では前後とつながってい
るんであって、ただ言葉上ではつながってないだけであって…。だからそこで
そういう、「タイムスリップ」っていう台詞は唐突ではないんですよ。

杉本:普段お芝居のこと考えてるとき以外って何されてるんですか?

岡田:ん?その質問は?

杉本:個人的な趣味とか。たとえば24時間チェルフィッチュのことだったり
創作活動だったりしてるわけじゃないじゃないですか。もちろんお風呂入った
り、何か食べたり。

岡田:んーっと…、してることと考えてることって別々に出来るんで、例えば
お風呂入りながらも考えてますよ。もちろん家事とかもするんですけど。でも
料理のときは料理に集中してるかなぁ。僕、料理は料理の本を見て作るんで。

杉本:ふふふ(笑)。

岡田:本見て作ると美味しく作れるんですよね。本って美味しい本とまずい本
があって、美味しい本がうちにはいっぱいあるんですよ(笑)。

杉本:じゃぁ、まずい本だとどんなメニュー作ってもまずいんですか?

岡田:あのね、大体ありますよね。まずいっていうか、それは好き嫌いの問題
なんだけど、その人のね、著者の味付け…。ちょっと古いとちょっと味が濃い
とかあるんですよ。味付けも流行があって、古い本とかだと、濃かったりしょ
っぱかったりしますよ。

杉本:(笑)

岡田:砂糖の量とか多いですよね。昔の本は(笑)。で、料理のときはそういう
ことで、芝居のことは考えてないですね。

杉本:何か趣味とかないんですか?

岡田:えーっと…、演劇そのものとかけ離れた趣味はないですね。結局映画見
たりとか。

杉本:スポーツとかは?

岡田:全然しないです。僕スポーツ嫌いですね。

杉本:見るのも? するのも? されるのも?

岡田:(笑)されるのは別に自由なんですけど…

杉本:(笑)的確なツッコミ、ありがとうございます。

岡田;あー、でも基本的に嫌いだなぁ…。興味ないですね。本当に興味ないで
す。 子供のときは興味あったんですけど…、嫌いですね、あえて言うなら。

杉本:そういわれると演劇のこと以外の興味を、探したくなってくるんですけ
ど。

岡田:あ、今、興味あるのは赤ちゃんのことかなー(笑)。

杉本:ご自分のですか?

岡田:あのね、4月に生まれる予定で、それでそれ関係でいろんな医学的なこ
ととか。たとえば最近、妻がおっぱいマッサージを教わってきてたりとか。い
や、実は今日、あんまり芝居の話にはもってかないで、赤ちゃんの話にもって
こうと思ってたんですよ。

杉本:うふふ(笑)。

岡田:この前「赤ちゃん本舗」に行ったりとかもしたんですけど。

杉本:赤ちゃんグッズ専門店ですね。

岡田:はい。結構彼女が熱心で、ネットでオムツとかミルクのサンプル取り寄
せたりとかしてますね。

杉本:岡田さんがご自分で選んだり、試したり?

岡田:まだ試してみたことはないですね。たぶん大きさが合わないんじゃない
かと思います。ていうか、赤ちゃんがむれるかどうかが問題じゃないですか。

杉本:それは問題ですよね。

岡田:僕が蒸れたとかじゃないですよね。仮にはめられたとしてもね。

杉本:(笑)仮にね。

岡田:百歩譲ってね(笑)。あとはねぇ、ベビーカーとかいろいろあるんですよ。
今のベビーカーって知ってます?

杉本:片手でたためるっていうのは知ってます…。こうやってガチョーンって。

岡田:そうそう。

杉本:ほんとね、ガチョーンですもんね。

岡田:あのねぇ、何回か練習するとすぐ出来るんです。

杉本:先日、亀戸のトイザラスで発見しました。

岡田:しかもね、軽いんですよ、意外に。重いと思うじゃないですか。で、ベ
ビーカーにはAとBがあるんですよ……。

杉本:でも、4月に生まれるんじゃ、芝居どころじゃないんじゃないですか?
岡田:でもまぁ、それは難しい問題ですよね。僕の中では、赤ちゃんが生まれ
るから芝居どころじゃないだろうっていう発想じゃなくて、じゃあもっとお芝
居頑張んなきゃな、っていう発想なんですよ。

杉本:うちのメンバーにも妊婦が二人いたんですよね。前回の二次審査のとき
に。えっと9ヶ月と10ヶ月だったのかな。

岡田:それ、相当ですね。

杉本:相当ですよ。だから、事務局の方に「もし破水したらごめんなさい」っ
てことでプレゼンを一番最後にしてもらったんですけど。だって破水した後っ
て嫌じゃないですか。だから最後にしてもらったんですけど、その二人は本番
も出るつもりだったんですよ。でも実際産まれてみると、彼女たちはとんでも
ないって言ってましたけどね。

岡田:そりゃそうですよ。



■「芝居をする」ということ

杉本:話は変わりますけど、台本を書かれるときっていうのは、キャスティン
グが決まってからなんですか?

岡田:そうですね、最近は。いわゆる「あて書き」っていう書き方です。

杉本:結構一字一語こだわって書いてらっしゃいます?

岡田:一語一句っていうよりも全体の流れみたいな方が大事なんで、そういう
こだわりは…、何ていうのかなぁ。ある意味ではないんだけど、意識の流れみ
たいなものがあって。

杉本:なんとなくわかります。僕らが喋っていても、たとえば正しい日本語っ
ていう観点から見るとおかしなところっていっぱいあると思うんですけど、

岡田:そうですね。いっぱいあります。

杉本:だけど、これで実際、コミュニケーションは成り立ってるわけじゃない
ですか。

岡田:少なくとも成り立ってると思ってますよね。

杉本:僕はそう思ってます。岡田さんがどう思ってるかは知りませんけど(笑)。

岡田:いや、思ってますよ(笑)。思ってるんですよ。でも、例えば今、これを
テープにとっているわけで、テープを文字にしたものを読むと。

杉本:まさしく今、これを読んでいる方に対してですね。

岡田:全然噛み合ってないじゃん、みたいな。すごいつっこみたくなる時とか
…。そういうのはいっぱいあるんですよ。でもそんなところで会話ってしてる
んですよね。そこをどうしても演劇の脚本ってそれがいけないっていうか…。
僕はそれがすごい面白いと思ってるんですね。

杉本:成り立ってない言葉で、会話が成り立ってるってことにってことですよ
ね。

岡田:そうそうそう。だけど、僕はそれを台本から立ち上げて演劇にするって
ことをやりたいんですよ。

杉本:僕は台本を見てないので、見てないベースで見てたんですけど、ただそ
の最初に稽古場にお邪魔して、岡田さんが「じゃあ始めましょうか」っていっ
たら、役者さんがすぐお芝居を始めたんですね。

岡田:はいはい。

杉本:あれって、いつもあんな感じなんですか?

岡田:あの、何ていうかな、役者が、演技するために必要ななにかを作る時間
みたいなものを想定するみたいな作業をすることとかあるじゃないですか…、
じゃあ「パン」(手をたたく)ってやって、もちあげるみたいな作業が。でも、
実際それ何やってんのよっていうつっこみみたいのを僕はすごいするんですよ。
で結局、それは何もやってないよっていう風にもってくんですよ。で、それは
もう、やらなくさせるんですよ。

杉本:その、役者が今から芝居をするっていう準備を。

岡田:いや。準備だと思っていることを、するってことですよ。で、それは、
何もやってない、何の意味もない、何の価値もない、ということをつっこむと
いうことから始めますね。

杉本:役者には芝居をするなってことですか?

岡田:違います。芝居をさせるんです。

杉本:芝居をしろっていってるんだ。

岡田:それで、芝居をするんです。僕にとって、「芝居をする」っていう言葉
の意味はそんな感じです。

杉本:なるほど。

岡田:今、杉本さんがおっしゃった言い方はすごくわかるんです。だけど、今
の言い方でいうと、僕が芝居をするなっていってるっていう意味は、僕の言葉
で言うと、それは…

杉本:やる事が芝居だってことですか?

岡田:そうです。芝居をすると思って持ち上げてるものみたいなのが、実は、
それを芝居でなくしている、ということです。

杉本:はい。わかりますよ。たいがい、見てて下手だなって思う役者さんって、
「芝居をしている」ってことですよね。

岡田:そうですね。いや、僕は芝居っていうのはいい意味で使いたいんですけ
ど。

杉本:僕はね、結構悪い意味で使ってますね。

岡田:それはまぁね。

杉本:表現方法の違いっていうか、役者さんの使い方の違いなのかもしれない
ですけど、僕はいつも稽古場で「芝居をするな」っていうんですよ。

岡田:それはわかりますよ。でも、僕は…、今日の稽古とかは、芝居をさせに
いってる、と思ってるんですよ。

杉本:結構指示出てましたもんね。いつもあれぐらい?

岡田:いつもあんなもんですよ。あの、結局芝居をさせないってことで…、何
て言うのかなぁ、僕がやっているのはわりと…、わりとじゃないですね、もろ
に日常に生きている人間のように芝居をするってことであって、もちろんそう
でない芝居もいっぱいあって…、あの…、そうじゃない芝居については、ここ
ではまったく触れないですけど、今から話すことの範疇の外にあるんですけど、
とりあえず、その芝居が、そういうことを狙ってる、日常のことば、喋り方、
日常からそんなに離れてないところで芝居をするっていうのを狙っているもの
だけを対象にしていうのなら、芝居をするなっていうときに、その…、無駄な
ものをやるな、というやり方で良くなるわけですよ。

杉本:うんうん。

岡田:実際良くなるんですよ。変だから、嫌だからそのものを取るっていうだ
けで良くなっちゃうので、取ることがひとつの方法になっちゃうんだけど、そ
うじゃなくって、取るだけで良くなった、良くなったからもうそれより先にい
っている。だけど、それに何かをやっぱり加えたいんですよ。無駄なものを取
るだけじゃなくて、付け加える、みたいな、何ていうか…。

杉本:その、いらないものを取るっていう作業もわかりますし、言っているこ
ともわかりますし、で、やっぱりその、付け加えたいっていうのは、本を書い
てて…。要は、脚本って戯曲としてはそれ自身が作品ですけど、実際は上演す
るための資料みたいなものじゃないですか。

岡田:はい。

杉本:でもそれで、伝わりきらない部分ってあるじゃないですか。ありますよ
ね。

岡田:はいはい。

杉本:作り手のね、本を書いたり演出したり。その部分を足していくっていう
作業のことなんですか?

岡田:いや、違いますよ。例えば役者が何かやりますよね。「じゃ、ちょっと
やってみて」っていってやりますよね。そのやり方に、無駄なものがいっぱい
くっついているとしますよね。そしたらとりあえず、それは悪い意味での芝居
だよ。それはやらないようにしよう。で、やらないためにはどうしたらいいか
っていう指示をだして、落としていくんだけど、それだけだと、人間として成
立してるかしてないかという次元では、成立してるんですけど、僕は物足りな
いんです。

杉本:それは皆さんに見てもらう作品として…?

岡田:何としてっていえば伝わるかな。身体としてかな。身体として物足りな
いんですよね。その役者の。身体として面白くないから、その身体を見出した
いんですよ。その身体を付け加えるためになにか、どっかから探せないかな、
そういうふうに引っ張り出せるきっかけはないかなって探して…。そうすると
役者が、今日も彼女(山崎さん)がちょっと、面白い身体を僕がつくるためのき
っかけみたいなのを出してくれたんですけど、出してくれるんですよね、今日
みたいなことをやっていると。で、そこを上手く掴まえられるとその身体を見
せる方向の演出が出来てくるんですよね。

杉本:実際本番まであとひと月…。

岡田:ひと月ないですね。

杉本:…だと思うんですけど、今日のような稽古がまだしばらく続くんじゃな
いですか?

岡田:続きますね。続くんですけど、実は、今日は多分まだ2ページくらいし
か進んでないんですけど、でも、つかむと、一気に流れるんですよ。本当にこ
れは。なので、ペース的には大丈夫です。

杉本:去年からされてるんですか、稽古は?

岡田:いちおう年末から始めました。

杉本:稽古期間っていつもそんなに長いんですか?

岡田:長くないですよ。今回はすごく短いなぁって思って。

杉本:え、どのくらいですか? 2ヶ月…。

岡田:2ヶ月ないですからね。いや、これはちょっと今後の反省ですね。短す
ぎるって。

 

■今の言葉と今の身体を使って演劇を作る

杉本:結構、稽古って毎日されてるんですか?

岡田:毎日せざるを得ないですね、こうなっちゃうと。

杉本:ほぼ毎日ペースで2ヶ月だと足りない?

岡田:そうですね。まぁ、焦ってやっちゃってますね。だから、これから考え
ていきますね。今回はそれがはやくも反省っていうか。

杉本:次回からもっと稽古しないと?

岡田:稽古するともっといろいろ身体を探れるんで。身体を探るのは、その身
体が出てきたっていうのが、いつ出てくるかっていうのは、本当にわかんない
んで、出てくるのを待つっていうか、出てきたものを、どれだけぴんとくるか
どうかってのは本当に運なんで、だから、本当にそこまで考えてやっていくと
すると、どう考えても短いですね。短いなぁと思っているんですけど。

杉本:今日のあのシーンの女性二人と男性一人が、三人が舞台に上がってるん
ですか?

岡田:現時点ではそうですね。

杉本:他の二人の方への指示がほとんど出てなかったように思うんですが、そ
れは、その先の話なんですか?

岡田:それは先の話だと思います。

杉本:今日はまだそこまでいってなかったっていうことですか。

岡田:そうですね。まず、あの二人のことをどうするかっていう僕自身の演出
がまだ固まっていないのと、今日一番やってた彼女と作った結果を見て決まる
ことだろうなって、今ちょっと思っているところはあります。そんなこんなで
すね。

杉本:ああいうテンションが本番の舞台でも繰り広げられる?例えばその、台
詞のボリュームだとか動きの大きさだとかっていう…。

岡田:はい。厳密に言うとボリュームについては調整します。それはスフィア
メックスに入ってからです。今まで何回かやってきた経験で、小屋に入ってや
ればすぐに出来ることだってことがわかったんで。まぁ、僕らはボリュームの
問題は大丈夫なんですよ。テンションとかも、まぁ、ずっとあぁですね。

杉本:結局その、動きも声も、大きければいいってもんじゃないとは思うんで
支配力っていうか、どこまでね…。今回の作品、例えばこの後お客さんがこれ
読んで、これから劇場に来られるじゃないですか。何か、こういうこと考えて
作りましたっていうか、まぁ作っている途中なんですけども。

岡田:そうだなぁ。

杉本:今回の作品の売りっていうか。劇団の売りでもいいんですけど。今回始
めて見られる方も、もちろんこの記事を読んでる中にいらっしゃると思うんで。
うちは、今こういうことをやってます、と。

岡田:そうだなぁ、僕が…、これは…、今回に限らず最近考えてることですけ
ど、演劇を作るのに使う、言葉であったり身体だったりとかについて、僕は今
の言葉と今の身体を使って演劇を作ることは可能だと思っていて、そういうの
をつくりたいと思っているんですよ。補足すると、今の言葉や今の身体は、演
劇には使えないと思われている頭がどっかにあるような気が僕はしていて、だ
けど、僕はそんなことはないと思いたい。どうしてそう思いたいかというと、
今の言葉、今の身体が演劇に使えないって考えることは、今の言葉や今の身体
を否定することにつながるからですね。それは、やっちゃいけないと思ってる
んです。今を生きている僕たちが。

杉本:なるほど。さて長々と話してしまいましたが、ありがとうございました。
私も当日伺いたいと思いますので、頑張ってください。

 




レポーター杉本隆吾の感想


こんばんは、杉本隆吾です。
夜型なのと決まり文句なので朝方読まれてる場合は失敬。

さて、先日「チェルフィッチュ」なるものを拝見した。
すでにインタビューの模様は読んでいただけたかと思うが、皆さんはオッパイ
マッサージは試してみましたか?
ちなみに私には適当な妊婦がいないので、未だ未遂である。
・ ・・物書きのクセに文章がおかしい。
頭痛が痛い。新しい新居。古い古居。 どれもおかしい。
チェルフィッチュ。。。これもおかしい。
なまっている。間違いない。

稽古を拝見した。
おかしくない。
舞台にありがちな「おかしさ」がない。
「つまらない」のでは無い。
「不自然」や「とってつけたような」がないのである。
稽古場にお邪魔して、挨拶を交わし、席に座った。
代表の岡田さんが「何をしましょうか?」と尋ね、「どうぞお好きに。いつも
通りに」と答える。
「では、稽古を続けます。」と岡田さん。
すると役者が雑談を始めた。
と、思った。
暫くして気付いた。
「あ、芝居が始まってたんだ・・・」
自然だった。
あまりに自然だった。
僕の予想を裏切る自然だった。

―普通―  その言葉自体があまりに普通が故に、人によってその解釈に差が
大きいだろう。

私の普通で言えば、「よーいスタート」とか「はいっ」とか「アクション」と
か、、、なにか掛け声で稽古が始まるのが"普通"だ。
もちろん私も、その普通がいやで、芝居をやったりしている人間だから、うち
の稽古も掛け声はない。でも実際は、演出家と俳優の間に始めるキッカケみた
いなのがあるのだが、、、、、ここチェルフィッチュには、感じられない。
俳優達は自然と芝居を始めている。始まったのに気付かないくらいだ。あれな
らファミレスで稽古しても気付かれないだろう。もちろん誉め言葉だ。
うちなら間違いなく1分以内に追い出される。
これを読んでいる岡田さん(チェルフィッチュ脚本・演出)は芝居をしている、
という表現が気に入らないだろう。
それもそのはず、そこで行われていたのは「芝居の稽古」ではなく、日常なの
だ。
面白い。
初めて共通点が見えてきた。

稽古を拝見している間は、あらゆる面で私の感覚と違った。
もちろん違う事は面白いのだが、全く共通点がないとすれば、その後のインタ
ビューが難しいなぁ、、、と思っていたりした。
仕方がないので脚本のストーリーとかでなんとかしようと思ったが、、、それも
ダメだった。
稽古が進まない。
いや、厳密にいうと進んでいる。
よく考えたら、私のやり方より、進んでいる。
台本でいうと1〜2枚しか進まない。
だから進んでないように感じる。
でも、そこを永遠繰り返している。
言葉・間・動作  全てに於いて、岡田さんは見逃さない。
瞬間的に、かつ的確に指示を出していく。
しかも俳優達はそれを瞬時に反映させている。
素晴らしい。
同時に羨ましい。
信頼関係や経験、技量が無ければできない。
それも全員が持っていなければ、、、、

後で尋ねてみた「あのペースじゃ大変でしょう?」
「いえ、あそこが完成すれば、最後までツゥーといくんですよ」
余裕な笑みを浮かべて話す岡田さんが憎たらしかった。
「でも今回は既に反省点があるんです。稽古期間をもっと長くするべきだっ
た」
聞いたら延べ2ヶ月以上の稽古だそうだ。
1ヶ月も稽古期間をとらない当方に比べれば(前回のA sophist of (no)
significanceは1ヶ月半とりましたが)相当長い期間だ。
芝居は最初が一番良い。稽古を繰り返すたびに、それは「芝居」になっていく。
繰り返して安心や安定を得られる反面、自然さやドキドキを失ってゆく。
私の概念だ。
しかしチェルフィッチュは、違った。
繰り返せば繰り返すほど、自然が溢れてくる。
もう何度も聞いた科白のはずなのに、同じところでドキドキする。
次の科白を一緒に言えるぐらい見ているのに、またドキドキする。
余談だが、山崎ルキノさんにちょっとばかし惚れた。
彼女の話す、他の男の話にジェラシーを感じる。
もう何度も聞いた科白のはずなのに、同じところでジェラシーを感じる。
次になにをしたのか既に知っているのに、まだジェラシーを感じる。
何故だ??
そこには「芝居」以上に面白い「日常」があったからだろう。

日常がこんなに面白いのに、わざわざ劇場に芝居を見に行かなくて良い。
行って損をしたと感じる舞台も沢山あった。
正直、最近は知り合いの舞台にも行かなくなりつつある。
でも劇場で、こんなに面白い日常が見られるのなら、日常をほっぽりだしてで
も足を運ぼうと思う。
チェルフィッチュという日常を観に。。。。

追伸:岡田様
奥様の体調は如何でしょうか?お子さまは順調に成長されてるでしょうか?オ
ッパイマッサージも面倒くさがらず、愛情を持って行ってください。お忙しい
場合は連絡ください。喜んで代行させて頂きます。もうあなた一人の身体では
ありません。無理をなさらず心身共に良い状態を保ってください。劇団の事な
ど、もぅどうでも良いではありませんか。

追伸:劇団員様各位
もうすぐ本番ですね。あらゆる面での成功を祈っています。代表の岡田さんは、
私生活でも大変な時期です。が、だからといって甘くしてはいけません。皆さ
まにとって舞台こそが、家族よりも大切なアイデンティティーでしょう。この
さい家族の事は忘れてもらって、共に良い作品創りに奮闘してください。



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にしかど (nskd@enpe.net)