絶対王様 稽古場レポート


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笹木彰人vs黒川麻衣●

●出演者一言インタビュー●

●レポーター黒川麻衣の感想●


芝居企画絶対王様はパンフレットの原稿を読む限りだとヒール(悪役)なのだそうです。プレゼンを観たときは、歌あり笑いありのエンターテイメント系演劇に思えたのですが、ヒールとは? もしかすると、稽古場では竹刀やチェーンが舞って、隈取りメイクの役者たちが怒声をあげているのかもしれない、そんなことはあるはずない。でももしかして・・・。とにもかくにも、その戦慄の稽古場にオッホの黒川麻衣さんがお邪魔しました。代表の笹木さんとは、先月、利賀村で開催されたワークショップに一緒に参加していたそうです。(事務局)

稽古場1一幕ものの芝居。場所はマンションの一室
出演者は男性のみ5人。緊張感のあるシーンが続く稽古場2
稽古場3演出の笹木さん。出演もするので演出席で稽古を観ることは少ない
今回客演の西村雅也さんと森川佳紀さん。初演時もこのメンバーで上演された稽古場4
稽古場5郡司さんが稽古中に腰を痛めた!なんでかは本番観てのお楽しみ


笹木彰人vs黒川麻衣

笹木:実は僕はすごくお話苦手なんですよ。なんでかわかんないんですけど。おもしろおかしい話しなくちゃっていうプレッシャーがあって。

黒川:まあ、固くならずに気軽にいきましょうよ。まず、クラッシックはお好きなんですか?

笹木:学生のときオーケストラでバイオリン弾いててたんですよ。だからチャイコフスキーやワーグナーが好きですね。僕は明石では有名なバイオリニストだったんです。踊るバイオリニストとして(笑)。それから郡司もオーケストラにいました。

黒川:今回、再演にしようって思ったのは?

笹木:単純に書けないからなんです。今年は2月、4月、6月と公演を打ってて、2月は新作書いたんですけど、いっぱいいっぱいで。4、6月は再演にしようと。

黒川:そうですよね。私もほんとに書くのが遅くて。そういえば、この前利賀村で一緒だったとき、私の次回作(「恋する三大欲求」)のための三大欲求アンケートに協力してもらったんですよね。どうもありがとうございました。

笹木:アレは匿名だったから書けたけど、結構すごかったですよね。性欲をどんなときに感じるかとか。でも頭いいですね、本書くのにああゆうアンケートとるっていうのは。

黒川:欲求は人によって違うから、いろんな答えがあってすごく面白くて助かってます。あの時、平田さん(青年団)と安田さん(山の手事情社)にもお願いしたんだけど、返ってこなかった(笑)。

笹木:欲求ってことじゃないんですが、実は半分オフレコなんですけど、去年の3月に全部リセットしちゃえって、家とか持ってるものとか捨てて公園に一年ぐらい住んでたんですよ。人にも会いたくないし、何もしたくなくて。一日中ハトみて暮らしてたんです。あの頃ちょっと壊れてたりして。

黒川:ホントに?すごいですね。

笹木:こういうのをウリにしちゃうのがイヤなんで、あんまりおおやけにはしたくないんです。きっとそういう経験で自分的に一皮むけたりしてれば、いいんでしょうけど。

黒川:じゃあ、劇団の人とかも何処にいるのかわからなかったんですか?

笹木:いや、何かあったら困るっていうんで、携帯電話はもってましたし、汚くなるのはイヤだったんで、たまに友達の家に遊びに行って、洗濯させてもらったり、お風呂入りにいったりとかしてました。僕のいた公園には200人ぐらいそういう自由な生活をしていた人がいたんですが、携帯電話もってたのは僕ぐらいでしょう。

黒川:今はどうしてるんですか?まさかまだ公園に住んでるとか。

笹木:いえ、今は普通に暮らしてます。大きな仕事が入って、そう、これはオフレコじゃなくて大きな声でいいますけど、プレステのソフトの本書く仕事をやったんですよ。今年の秋に出るんですけど、皆さん買って下さい。「ラーメン橋」っていうゲームです。「ラーメン橋」「ラーメン橋」・・・。

黒川:どんなゲームなんですか?

笹木:オヤジ育てゲームです(笑)。たまごっちのオヤジ版。美味しいラーメンをつくるといいオヤジに成長していくゲームです。

黒川:演劇的なタイトルですね。

笹木:絶対売れないと思うんですけど。そんなゲーム。僕はゲームとか疎いんですよ。機械とかにも弱いし。インターネットとかも全然わかんない。これはインターネットに出るんですよね。

黒川:そうです。「えんげきのぺーじ」というところに載ります。それで話変わるんですが、今回の「ゴージャスな雰囲気」っていう作品は気に入ってる作品なんですか?

笹木:そうですね。一番僕が壊れてたときの本なんですけど、僕は人との距離をの取り方がすごく苦手なんですよ。それまで十何人も役者がでるようなものをやってたんですが、きつくって。そういう人間関係とかを排除して、5人だけで芝居しようってつくったものなんです。

黒川:じゃあ、結構心地よい思い出とかも?

笹木:うーん、癒しって感じですね。この本はもう「ガンバレ俺」って本なんです。で、逆に質問なんですけど、演劇やってて楽しいですか?

黒川:うーん、人間関係はきついですよね。演劇は集団作業だし、純粋に表現のことだけじゃないですからね。かなり悩んだ時期もありました。

笹木:僕ははっきりいって演劇には向いていないって自覚してるんですよ。ガーディアン・ガーデン決まってなかったら演劇やめてました。その前はパルテノン多摩にお誘いがこなければやめてましたね。やめようと思っているのに、こんないいフェスティバルから誘われたり受かったりで、もうチョット、もうチョットだけ、でやってるんです。

黒川:何で向いてないって思うんですか?

笹木:気が小さいからですかね。例えば昔はもっとシーンの沢山ある芝居を書いてたんですよ。それが、本番前になるときっかけ稽古や場当たりやらでみんなピリピリするじゃないですか。そういうのが恐くてイヤなんで、だんだんと一幕ものになってたんですよ。きっかけも少ないし。こんな理由の人はいないですよね。だから人の上に立ってものをつくるのに向いてないんだなと思います。

黒川:たぶんいろんな事に気を使いすぎてるんじゃないんでしょうか。

笹木:ほめてもらいたくて芝居やってるのに、怒られてたら意味ないですもん。すごいシンプルな部分で、褒められたい、ちやほやされたい、もてたいってことでやってるのに、演劇はリスクが大きすぎるんですかね。

黒川:すっかり後ろ向きな話になってしまいましたが、前向きなメッセージをお客さんにお願いします。

笹木:エンターテイメントです。ああ面白かった、ということだけで見終わった後に何も残らない。できるだけふにゃふにゃしてたいんで、ぬるーくいきたいですね。

黒川:どうもありがとうございました。

謙虚な姿勢でニコニコと話をしてくれる笹木さん。演劇やめたいとかいってましたが、きっと演劇が大好きなんだと思います。事務局の勝手な推測ですが。 というわけで、個性溢れる実力派の男優5人で挑む「ゴージャスな雰囲気」。笹木さんもおっしゃってた通り、気合いの入った絶対王様の自信作であるのはもちろん、いろいろと思い入れのある作品だそうです。皆さまぜひご覧になって下さい。(事務局)


出演者一言インタビュー

有川マコト

メッセージ/とにかく肩の力を抜いて見れるお芝居です。気軽な気持ちで、映画を見に行くような、動物園に行くような気持ちで来て下さい。
今一番したいこと/早く本番やりたいです。

郡司明剛

メッセージ/楽しんでもらえればなと思ってやってますので、ぜひいらしてください。
今一番したいこと/お付き合い。交際です。

西村雅也

メッセージ/芝居を一度も観たことない人にでも楽しめるようにつくってますので、ぜひ来て下さい。
今一番したいこと/毎日忙しいんで、公園とかで一日ボーっと寝たいです。

森川佳紀

メッセージ/すごい面白い芝居が出来上がりそうなので、ぜひ観にいらしてください。
今一番したいこと/会社を辞めて、芝居に専念したい。


レポーター黒川麻衣の感想

ゴージャスな稽古場

 その稽古場はとても広かった。舞台を実寸でとってもまだ半分余っていた。しかも使っているのは5人の役者に4人のスタッフのみ。まさに贅沢、まさに『ゴージャスな雰囲気』である。
 今回の作品は96年に上演された『ゴージャスな雰囲気』の再演で、出演者もまったく同じである。そのせいか手探りの稽古という感じではなくかなり余裕のあるものだった。とはいえ、今回は客席を3方向に設置したため立ち位置や動きの段取りは相当細かい。通り道を間違えただけでも芝居を止めて確認する。そういったところで役者さんたちはちょっとだけ苛立っていた。時間経過が重要な鍵となるらしく、稽古場の時計を勝手にいじっていた。気の小さい私は怒られないかと心配になる。ラストシーンの稽古が終わり、違うシーンの稽古をしようと全員上半身を脱いだ。きっとバカバカしいシーンに違いない。期待が高まる。その時スタッフの1人が言った。「もう退出時間じゃない?」 あたふたと片付け始める絶対王様。何のための半裸だったのか?欲求不満のまま、私は稽古場を後にした。

癒しの人 笹木彰人

 リーダーには父性を感じさせる人と母性を感じさせる人がいる。前者はたくましく頼れる存在であり、後者はしょうがない人ねと周りに思わせるタイプである。笹木さんの場合は圧倒的に母性派のリーダーで、部外者の私ですら何かしてあげたいと思ってしまう。すばらしい才能である。ちょっとでいい。わけてもらいたい。
 笹木さんはたいそうシャイな人で猛烈に気を使う。初対面でも物怖じせずバンバン土足で踏み込んでくる人が多い中、一生懸命話しかけてくる笹木さんは妙に人間らしさを感じ、体の芯まで暖かくなる。アロマオイルもいいけどどうせなら人に癒される方がいいなと私は思う。

黒川麻衣

71年生まれ。92年にオッホを設立、乾いた視点で真の現代を描く演劇を追求している。今年は「オッホ愛の一年」と称して恋愛をテーマにした作品を展開中。第5回GGフェスに参加。

次回公演のお知らせ

『恋する三大欲求』7月1日〜4日 駅前劇場
食欲・性欲・睡眠欲をめぐる三話オムニバス お楽しみに。


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にしかど (nskd@enpe.net)