12月のおすすめ芝居(東京)

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うにたもみいち/コメント


 先月は、文学座、唐組若手、猫ニャー、ロリータ男爵、遊園地再生事業団、T PT、クナウカ、維新派、そとばこまち、弘前劇場、南青山少女歌劇団などを見 たが、中でも最も鮮裂な刺激を受けたのが猫ニャー『鳥の大きさ』だった。猫ニ ャーの方法論がギッシリ集約されていたという意味で、彼らの現時点における偉 大な到達点といえるのではないかと私は思っている。しかし、当サイトや他の通 信系フォーラムなどにおいて、「あれは不満だ」といった類の声もいくつか聴こ えてきているようで、それはそれでわからないわけでもない。先日、あの赤塚不 二夫氏にお会いする機会があり、「私は小学生の頃『レッツラゴン』が何よりも 好きでした」と申し上げたところ、「ぼく自身も、一番思い入れの深い作品が『 レッツラゴン』なの。でも、あれはナンセンスが強すぎて世間じゃちっとも受け なかったんだ」とおっしゃられた。そんな話と併せて考えてみるに、今回の『鳥 の大きさ』も、世間での評価が本当にイマイチなのだとしたら、まだ世の中が猫 ニャーの本質的なオカシサを受容する段階にまで達してないということなのであ ろう。そりゃまあ大人計画だって、世間に受容されるまでに5〜6年はかかって いるのだから、これは仕方ないことだ。しかし、例えば映画『バウンスKOGA LS』や南青山少女歌劇団『ハイスクール・レヴォルーション』なんかが、若者 の意識や感性を実はさして描き出せないまま結局はありきたりな物語性に回収さ れてしまっていたことに比べれば、『鳥の大きさ』のほうがはるかに、1997年と いう時代状況の気分や感性を、構造や方法に置換させることによって心地よく描 き出せていたと私は一人勝手に思っているのである。

 それから、今年後半に集中的に上演が続いた別役実シンドロームもようやく落 ちついた。ミュージカル、ナンセンス喜劇、静かな演劇、外国人の演出、等々、 別役戯曲上演の多様な可能性が試みられ、それが若い世代を含む幅広い演劇愛好 者たちに関心をもって見られた、ということはそれなりに有意義なことだったの ではないかと思っている。こうした仕掛けに対して、旧来の演劇評論家筋から、 どのような反応が出てくるのかと思っていたが、わりと表面的に、どちらかとい えば否定的な感想がちょろちょろっと語られる程度で終わってしまったのはやや 物足りなかった。かく申す私についていえば、今回はシンドロームの内側に位置 することが多かったので、客観的に書きヅライという点はあったにせよ、それで もそれなりの総括を書かなきゃならんと自分としては考えている(そして、それ を己れのホームページにアップしなきゃと思っている)のだが、しかし多忙にか まけて、なかなかそれが出来ずにいるのは深く反省しております。

 それにしても、今年は、別役実、赤塚不二夫、さらにここにきて筒美京平と、 私にとっての重要なバックボーンたる巨人たちの足跡が、次々と回顧されていっ た年だったなあ。まあ私に限らず、1960年周辺に生まれた世代の、ある種の人々 にとっては、そういうものを通して、自分自身をも棚卸しするような、そんな一 年たりえたのではなかろうか。たぶん、あと何年かは、その世代にとって思い出 深い「ナントカ30周年」といった企画が他にも続々と出てくるだろうな。



 さて、12月中旬以降のオススメ芝居に話題を移しましょう。

 げんこつ団は、「昼げんこつと夜げんこつがたたかう」という、なんだかよく わからない意欲的な二部構成となるそうで、その、よくわからない意欲を大いに 買いたい。

 ベターポーヅの新作は、バルテュスの絵画作品をモチーフに短編をいくつか作 り、それらを日によって組合せを替えるという、プログラム入れ替え式オムニバ スとなっている。仕事の関係で毎日出られない女優・加藤直美に配慮して、そう なったそうだ。絵画の、描かれているものそれ自体というより、その表現の手法 を、演劇の方法として置換してゆこうとする作・演出の西島明の本領発揮といっ たところか。ならば、バルテュスの奇妙なポーズや表情・雰囲気が、ベターポー ヅの得意とする奇妙なテンポや間合いにどう反映されてゆくのか、楽しみである 。なお、バルテュスのドキュメンタリー映画がいま渋谷のユーロスペースで公開 されているので、これを見て予習していただくのも一興であろう。この映画では 、バルテュスの家に勝新が訪ねてくるという嬉しいハプニング場面も見られるそ うだ。

 それから静岡の超歌劇団。日本広しといえど、「超歌劇団」「超歌劇団」と毎 回騒いでいるのは、さすがに私ひとりであろう。地元・静岡の舞台関係者からさ え「うにたもみいちは一体何を考えているのだ」と顰蹙を買っているらしい(笑 )。しかし、私は本当に彼らの素朴でパワフルな芝居を面白いと思っているのだ から、これはもうどうしようもない。今度の彼らの新作「37曲署拷問課」「クイ ズ・解答者は怒った」は、一人芝居二本立てだが、主宰者うるけん一郎太によれ ば、他に類を見ない、そうとうにテキトウな上演形態となるらしい。どのように テキトウなものかは、ネタバラシになるといけないので、ここでは敢えて書かな いが、彼らのことだから、ハンパでないテキトウ、超テキトウなものになると思 ってもらっていいだろう。そんなものを静岡まで見に行くことを、ヨシとするか 、それとも怒るか、怒るくらいなら見に行かないか、はたまた「うにたもみいち の言うことはメチャクチャで全く信用ならん」といって見に行かないか、みなさ んにはその4つの選択肢の中からどれか一つを選ぶ権利があります。問い合わせ =054-294-1012。

 右足セクシーGripsは、あの伝説的な「ハンサムタワーズ」の一員、古澤龍児の 旗揚げした劇団で、出演者も小手伸也(彼も伝説的な「ハンサムタワーズ」の一 員)はじめ、そちら系の面々ばかりである(あと、ナイロンと企画66と、セン スよく二股をかけていることで一部で注目されている谷口朋子も参加している) 。日替わりゲストも、加藤直美や藤田記子(現・カムカム)と、やはりそちら系 である。こうなると、ただ“あのひと”がいないのが惜しい。wish you were he re, どうなっているのであろうか“あのひと”は。“あのひと”は、ピンクフロ イドのシド・バレットと化すのか。せめて、ビーチボーイズのブライアン・ウイ ルソンのように関わって欲しいね。『ペットサウンズ』BOXセットも出たこと だし。

 エレチョップソニックとくちびる17ヘクタールは、全然知らない劇団だけど、 劇団名が変なので、★ひとつつけてみました。内容については、まったく保証し ない。見に行くかどうかもわからん。
 ついでに、前回キャラメルボックスに★をつけたことについて弁明しておくと 、NHKで毛利隆元を演じる上川隆也を見てて「いい役者じゃないか」と思えて きたからにほかならない。彼が出る舞台なら、ということで★をつけてみたのだ 。まあ、キャラメルボックス自体については、よく出来た芝居であることは私も 以前から認めている。ただ「よく出来た芝居」をむやみやたらと誉めたり推奨し たりしないのが「うにたもみいち」なのだ。ならば「いい役者」だったら誉める のか、といえば、そう、誉める。なぜって、そんな、きちんとした理由などない 。「いい役者」は理由なく手放しで誉める。NHK『毛利元就』は、上川・松重 ・恵による毛利三兄弟もよかったし、女優陣も富田靖子・葉月里緒菜・高橋由美 子・大塚寧々・岩崎ひろみ・松本恵と、私好みのいいキャスティングのドラマだ った。終わり近くで松本恵が再登場するので、見るほうも最後まで気が抜けない 。来年の『徳川慶喜』も楽しみ。いかん、いかん、話がそれてしまった。

 でもって、あとは、1997年を締めくくるにふさわしい2本を見て、今年の観劇 はうち止め。当「えんげきのぺーじ」では、事前の解説は一切不要の、強力無比 なる2本。大人計画とイデビアンクルー。

 そう、そう、関連イベントとしては、おなじみ「ガーディアンガーデン演劇フ ェス」の選考会が、12月20日(土曜日)フジタヴァンテにて。そして、当「えん げきのぺーじ」主催による「第二回日本インターネット演劇大賞」選考会が、12 月29日前後にどこかの居酒屋にて行われる予定。前者は公開制(入場無料)、後 者は公開制ってほどの大袈裟なものではないが、見物は自由・・・ですかね、に しかどさん?今年の選考会はさっさとすませて、あとは忘年会にしてしまいたい 。


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